一般的に勧められている食料備蓄は、「1週間分ほどとされている」とよく言われます。でも、1週間分で本当に十分なのでしょうか?
また、食料備蓄と聞くと、ほとんどの人が缶詰やレトルト、アルファ米などの高価な「非常食」を思い浮かべますが、中長期用の備蓄は、ただ「非常食」の量を増やせばよいのでしょうか?
ここでは、誰もが必要とする備えとその大切な理由についてお伝えします。
誰もが中長期の食料備蓄をしたほうがよい理由
一般的な食料備蓄は誰かが助けに来てくれることを想定している
早速ですが、1週間の備えで十分なのかということですが、確かに各地で起こる局地的な災害の場合は、復旧が早く進むので、1週間分ほどの備蓄で乗り越えられるケースが多いようです。
しかし、災害の規模が大きくなったり、被災地が広範囲に及ぶと、物流やライフラインの復旧までに時間がかかっています。たとえば、熊本地震や東日本大震災の場合、電気はおおむね1週間で復旧したようですが、東日本大震災では、ガスの復旧に約2カ月かかり、水道の復旧には1年以上経っても4.5万戸が断水が続いています。熊本地震でもガスの復旧に約2週間、水道の復旧には3カ月半かかっています。
ライフラインの復旧 | 熊本震災(2016.4) | 東日本大震災(2011.3) |
電気 | 1週間で全復旧 | 1週間で95.6%復旧 東北電力管内では約3か月後に復旧完了 |
ガス | 約2週間後に復旧完了 | 約2か月後に復旧完了 |
水道 | 約3か月半後に復旧完了 | 2012年5月時点で4.5万戸が断水 |
今後予想される危機には、中長期の備えが必要
では、首都圏直下型地震や、東北沖と南海トラフ地震が連動して発生するなど、広範囲で甚大な被害が出た場合はどうするのでしょうか?富士山の噴火や疫病なども重なり、国内のインフラや流通に壊滅的な被害が及んだときのためにはどのように備えたらよいのでしょうか?戦争や、食糧・燃料・経済危機など、すでに世界中で繰り広げられている危機が日本にも押し寄せるときに、どのように生き延びればよいのでしょうか?
このような状況になれば、短期の食料備蓄では不十分であることは明白です。そのように広範囲に及ぶ危機に備えるには、必ず中長期(1年~数年以上)の備えが必要になります。
短期的備えと中長期的備えは何が違うのか
短期の食料備蓄は、調理しなくても簡単に食べられる非常食が便利です。災害の直後などは、当然ながら調理をする余裕などないことがほとんどだからです。非常食は栄養が偏りやすいので、野菜(水やお湯で戻して食べる海藻サラダや乾燥野菜のサラダなど)や果物(小さなフルーツ缶詰、ドライフルーツなど)、体調が悪くなっても食べやすい食べ物なども備えておくと助かります。
ところが、中長期となると話が変わってきます。非常食だけを何日か続けて食べた経験がある人はご存じだと思いますが、必ず飽きます!
非常食を食べ慣れている人は平気かもしれませんが、普段から手料理を食べている人にとって、食べ慣れていない味の既製品ばかりを食べるのはかなり苦痛になりかねません。栄養も偏ります。すると、免疫も低下してしまいます。
そのため、中長期の備えは、缶詰などの非常食だけでなく、米やパスタ、小麦粉など長期保存が可能な主食、乾燥豆や乾燥野菜、各種調味料、油脂など「おいしく」「バランスの取れた」食事ができる食品を中心とした備蓄がおすすめです。
また、たとえ少しでも家庭菜園があれば、新鮮な野菜を食べることができます。
調理をするための燃料も欠かせません。
水も大切です。ほとんどの家庭では、ペットボトルなどでは量が貯蔵できないため、浄水器や大型のタンクなどが必要となります。
長期的/自給自足型に向けた備えの必要性
軍事専門家たちが指摘しているように、日本の国や日本が頼りにしている米国が、軍事攻撃を受けたらどうなるのでしょうか。各国が同盟で結ばれている今日では、戦争はウクライナ情勢のように局地的なものにはとどまらず、同盟国間による世界規模のものへと発展しかねない仕組みになっています。
昨今話題になっている外国からの高高度電磁パルス攻撃やその他の戦争行為によって、広範囲に及ぶライフラインやインフラが破壊されたり、一斉にミサイル攻撃を受けるなどすれば、国家存続の危機に陥ることも十分にあり得ます。日本が戦場になることも十分にあり得るのです。すでに警告されているような、致死率が高い疫病によるパンデミックや生物兵器なども、社会全体に甚大な危機をもたらします。
そのような深刻な危機に対しては、長期的で自給自足をベースにした備えが中心になります。
そのような状況を乗り越えるためには、少なくとも1年分(できれば2年以上)の食糧貯蔵と家庭菜園、種の備蓄、燃料、衣類、その他の生活必需品を備えておく必要があります。また、基本的な日曜大工の道具やスキル、けがや病気に対処する知識、野草や薬草に関する知識などもあると助かります。
住む場所の安全性も、大きく影響します。すでに弾道ミサイルによる攻撃の標的となっている軍事施設や都市、重要インフラの近くに住んでいるのなら、安全な地域に引越すことを検討した方がよいでしょう。現代では核兵器などにより巨大人工津波を起こすことも可能になっているため、海の近くに住む人は、想定以上の津波が来た時のことを考えたほうが賢明と言えそうです。
とは言っても、住み慣れた場所を離れるのは簡単なことではないですよね。でも、大切な家族の命を守ること、長い目で見た将来設計を考えるなら、安全を優先した場所を選ぶという選択肢もあるのではないでしょうか。備えについて取り組んでいると、備えるために都会から田舎に移住している人が結構いらっしゃることを耳にします。私が住んでいる地域にもいらっしゃいます。我が家もそうです。
心理的な落とし穴
現実拒否「そんなことはあり得ない!」
しかし、そんな想像もできないような危機に直面するなんて、誰も考えたくないですよね。私たち人間には、あまりにも大きな危機に対しては、「そんなことはあり得ない」と否定してしまったり、極度に恐れを抱いたり、思考が止まってしまったりする傾向があります。 ところが、理由は何にせよ、備えていなければ危機に直面したときに、希望を失うことになりかねません。
しかし、危機が訪れる前であれば、私たちは備えることを選べます!起こり得る現実としっかり向き合って前向きに備えるなら、危機的な困難に面しても希望を見出すことができるのです!
感情的な決めつけ「中長期の備えなんて極端すぎる!できっこない!」
年単位の食料備蓄と聞くと、想像もつかず、ついつい「無理だ」と考えたくなってしまいそうになりませんか?無理もないことだと思います。
でも、中長期の食料貯蔵は、日本に住んでいても実践できます。簡単で、おいしくて、栄養のバランスがよい食事ができるように貯蔵する方法がわかれば、長期の食料貯蔵は難しくないどころか、普段の生活の一部になって、楽しくさえなります。
このサイトでは、一人でも多くの方が、勇気と希望を持って、前向きな備えに取り組まれることを願って、実践をもとにした役立つ情報をシェアしていきます。
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この記事の筆者の紹介
下川健一。滋賀県出身。米国ブリガム・ヤング大学卒(臨床心理学博士)。ノースウェスタン大学ファミリー・インスティテュート博士研究員、同大学心理学部大学院講師(カウンセリング心理学)を経て2012年に帰国。メンタルヘルス関連のコンサルテーションやカウンセリングを提供する組織の管理職を経て開業。また、世界情勢が急速に変わりゆく中、一人でも多くの人が今後の世界に備えられるようにできることはないか真剣に考えるようになり、書籍の翻訳・出版活動を通して物理的、精神的、霊的な観点から幅広く備えについての情報発信にも取り組むようになる。その一環として米国在住のメンタルヘルス・カウンセラーの友人が3度の臨死体験中に見た壮大な示現の記録『栄光の示現:一人の男性が見た末日に関する驚くべき示現』を翻訳し自費出版する。また、聖書の終末予言を理解する鍵と言われる旧約聖書のイザヤ書の解読に極めて重要な古代の文学手法を発見したアブラハム・ギレアディ博士によるイザヤ書の解説書を翻訳、出版、普及する活動に取り組んでいる。また、一家一年分の食料貯蔵と家庭菜園を実践し、家庭でできる食料の保存法について情報発信に取り組んでいるため、備えについての相談を受けることが多い。自給自足を視野に入れた長期の備えの大切さをベースに食料貯蔵と家庭菜園をベースにしたライフスタイルの魅力と重要性を発信していこうと、有志と一緒にSONAEを立ち上げることに。現在下川心理臨床カウンセリングオフィス代表、オリーブ出版代表、一般社団法人イザヤ研究所インターナショナル代表理事。長野県在住。
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